まもって守護月天

〜22Century〜

 

 

〜16話(オールバンデット、全軍突撃――…って、本文とは全然無関係)〜

 

 

 春も近い土曜日のある日、午前11時43分。遂に鶴が丘市は一人の女の侵入を許してしまった!

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          翔「ああ…なんだぁ? あれ…」(←サボリ)

 紅蓮の炎を纏った“球”が天空から落下してくる。次第に近づいてくるその球を、翔子は顔を上げて注視した。どんどんと近づいている――どんどん――どんどん――どんどん――

翔「おぉうぉうっ!?」

 ずがーんっ――と轟音と共に強烈な爆風が彼女を吹き飛ばし、翔子はコンクリートの路面に投げ飛ばされた。

翔「な…なんですかぁ!?」

 昏倒した身体を鞭打ち顔を上げると、そこには民家と道路がまるまる消滅し、その場所には直径5メートルのクレーターが奇麗に出来上がっていた。

 覗いてみれば、クレーターの中心には装甲の焼けた球形の有人ポッドが一つ――すると、ポッドのハッチがカパと開き、

?「ふぃー、やっと着いたぁ」(笑顔)

翔「住宅三軒半壊させといて笑って言うかそんな事っ!?」

  ――見知らぬ女性に、反射的とはいえツッこむか、普通。

 褐色の肌の女性は、かっかっかと大口で笑う。ひょい軽く跳躍し、翔子の目の前に着地した。そして、左目に装着していたスカウターを作動させ、彼女を見下ろした。

?「ま、いいじゃんいいじゃん――…戦闘力15か…民間人だな」

翔「み、民間人? つーかアンタ、宇宙人かよ」

?「ううん? 違う違う。単にあの宇宙船で日本海飛び越えてきたのだよ」

翔「宇宙船を大陸横断の手段に使うんじゃねぇよ

 その場合宇宙船って言わん気がするが…。

?「ところで、アンタ七梨って家知らんか? 風変わりなガキが一人住んでるんだが」

翔「え? あ、ああ――七梨ン家なら、あっちだ――もっとも、今は学校だろうけど」

  そう言って、七梨家と学校の方角を指差した。

?「そうか、あっちか――…む? 大きな戦闘力が、1つ…2…いや、3つだな。何だ?」

 学校の方角にスカウターを向け、位置、距離、数を確認。

?「西南西の方角に、距離1400…まさか、あの子が?」

翔「おぉい…勝手にシリアス口調に持ち込まないでよ――何者なんよアンタ」

?「戦闘力…一つは334か――…うっ!? この2つ…戦闘力5000、そしてもう1つは18000だと!?」

翔「うぐぅ…無視しないでよぉ…」

?「ともあれ、無視は出来んな――…全宇宙一の強戦士サイヤ人の誇りを見失ったのか――太助っ!!」

 

 

 …1日後。

 

 

シャ「太助様ぁ、今日はお茶に『鳥兜』なんて入れてみましたぁー」

太「へー、サンキュー」

ル「ンなモン飲めるかいっ!!」

 すがーんと言い放つルーアンに対し、太助はそのお茶をまじまじと見て、ふっとルーアンに湯飲みを向けた。

太「ルーアン、原作通りに間接キッスしないのか?」(にやそ)

ル「アンタ、ほんっ…とにヤな性格してるわよね」

シャ「しかし太助様、最近私のボケに慣れてきましたねぇ。以前は絶叫でツッ込んで来たのに。シャオリンちょっと寂しいです」

太「ったりめーよ。毎度毎度キレてたら俺の毛細血管が持たないっちゅーねん」

ル「心臓に毛が生えてる分際で、よくそんな嘘言えるわねー」

 その時、玄関のベルが鳴る。

シャ「あーい、そちら様ですねーっ」

 ぱたぱたと音を立てて、シャオは玄関に姿を消した。

 

ル「…今の文法、ちょっと変じゃ無かった?」

 

 

 “がちゃっ”

シャ「合言葉を言えっ」

?「炎の民よ、踊れ

 刹那、劫火がドアを包み、瞬時に灰となって崩れ落ちる。

太「待てぇぇぇぇっ!!!」

 リビングから首だけ出して突っ込む――が、シャオとその向かいにいる女はそれを無視。

シャ「OK☆」

太「合ってるんかっ!? 合言葉っ!?――……!」

 そして、彼はその女の顔を注視した。

太「あ…アンタは」

?「よ」

太「サイキック・ウェィィィィッブ!!

?「ぬぅ!?」

 女の立っていた空間が歪曲し、収縮――そしてシャオも巻き込んで女と共に爆散する。

太「はぁぁぁぁっ!!」

 間髪入れず、何やら様々な武器が組み合わさって成る仰々しい大型の剣を何処からとも無く抜く。

 

太「破邪・百獣剣ッ!!!

 

“ズガヴォゥゥゥッ!!!”

 

 

 その振り下ろした剣から放たれた光線は彼女達を包み、そして大爆発を起こした。

 

 

ル「なっなっなっなんなのなんなの!?」

 身を乗り出し、原型の無くなった玄関を覗くと、息を切らした太助の背中があった。

太「ハァ…ハァッ……不意打ちにこれだけやれば…!」

 

アッハッハッハッハ!

 

 太助の顔が凍った――あらぬ方向から、その女の高笑いが聞こえる――ルーアンが聞こえた方向を見ると、そこには3階建ての民家の屋根から腕組みをしてこちらを見下ろす先程の女の姿があった。

 

太「ちっ――やはりあの程度では」

?「不意打ちとは、相変わらず性根が腐ったミカンね」

ル(…ミカン?)

 嘲るように太助に言い放つと、女はばっ、と変なポーズを取った。

 

?「灼熱の獅子、那奈・イエロー!

 

ル「しゃっ、灼熱なのに何故にイエロー!?っちぃっ!?

 那奈の人差し指から放たれたレーザー砲がルーアンの足を焼いた。

 

那奈(以下:那)「生命ある処に、正義の雄叫び在り!」(←ポージング)

 

太「くっ…世間体無視して、よくやる…――それでどれだけ俺が恥ずい目にあったか!!」

 

シャ「…どういう事です?」

 瓦礫の下からシャオが起き上がる――流石に、あれでは死ななかったか。

太「シャオ…」

シャ「…フフ…一時休戦です――ですが、終わったら即刻全殺しですが」

太(どっちみち殺されるんか、俺)

シャ「――それで、あの那奈・イエローって何者です?」

 

太「ああ…それは」

 

 ――それは、俺が小学校の頃。真面目に学業を学んでた頃。

ル「…アンタの歴史に『真面目』なんて単語があったのね」

 ――当事、姉貴は通ってた中学(つまり、鶴が丘中学だな)で毎度毎度問題起こして来たんだよ。

シャ「…今のアナタに近いと思いますが」

太「お前ら言いたい事言ってくれるな…まぁいい――で、姉貴だが――その問題ってのが、暴力沙汰でな」

ル「あー、不良だったワケね」

太「いや、逆」

ル「は?」

太「だから逆だって。根っからの極端な正義超人で、校内のほんのちょっとした事――例えば、ちょっと廊下を時速5キロ以上で走っただけで、姉貴の餌食なんだよ」

シャ「しっちゃかめっちゃか人間ですね」

ル(シャオリン、アンタも十分しっちゃかめっちゃか精霊でしょうが)

那「言いたい事はそれだけっ!? なら、死ぬがいい――…私が知らない内に、同棲生活などと…同棲生活など…――1光年早い!!

ル「嫉妬かいあうぐはっ!?

 那奈の腰から抜いたビデオビームガンの一撃にルーアンは打ち抜かれた。

太「アンタ……俺はアンタを…越える!」

那「戯け――弟が、姉に勝てると思うてか!」

 そう言って、那奈は一振りの大太刀、超獣剣を抜き遣った。

シャ「剣術使いですか――太助様、この勝負、私にやらせて貰えません? 面白そうですし」

太「――…あぁ?」

 シャオが太助の前に立ち塞がると、那奈は眉を吊り上げてシャオを睨んだ。

那「ふん、我が弟を誑かした売女が。ぶっ殺す

太「気をつけろ。那奈姉は俺が知る限り十数年間連勝中なんだ――負けた事は1度も無いんだ。旅に出たのも、『敗北を知る為』だったし」

那「ふっふっふ、今でも20年間連勝中だぞ」

シャ「なら――教えてあげましょう、敗北と言う2文字を、貴方に!!」

 シャオの身体が跳ね、振り翳した右手を那奈に叩き付ける――屋根ごと住宅の3、2階は粉砕するが、既に那奈は更に上に飛翔し回避した。

那「遅い」

 縦に、闘気のオーラを帯びた超獣剣を構え、そしてスキだからけのシャオの背中に向け、振り下ろした。

那「スーパー・ライブクラッシュ!!

シャ「なにっ!?」

 “ザシュゥッ!!”

 その一撃で、住宅は完全に破壊された。なんとかシャオは前に身を跳ねて回避するが、那奈は超獣剣を放り捨て再び追撃――

ル「使い捨てー!?」

 気を溜める那奈の右拳にオーラが纏う――そして、間髪入れずシャオの左頬に叩き付ける――

那「ミラクルビッグブローッ!!

 “ズガァァァッ!”

シャ「ぐぅっ!?」

 諸にシャオはそれを喰らい、コンクリートを砕きつつ地面を滑り、ブロック塀に背中から叩き付けられた。その勢いに、塀は砕け、横たわるシャオに覆い被さった。

シャ「なんとぉ…やる!」

那「力はあるが…如何せん直情的だな、動きが甘い」

シャ「私ともあろうものがこんな小娘に…」

 月の輝く夜ならば、不死身となれるのだが――無いものを強請るのは、弱い証拠だ。今あるものを最大限に活用する――それが強者だ。

太「気ぃつけろよー。那奈姉は俺と同じく不死身だからなー」

ル「マジで?」

シャ「不死身なら、不死身なりの倒し方があります――最近、太助様に使おうと思ってましたが」

太「物騒な話だなヲィ」

那「135000…戦闘力が更に上がったわね――だがっ!」

 シャオの周囲の大気が震える。小石や砂利が、シャオの放つ闘気に感応し、浮き上がる。対し、那奈は新たに別の剣――コズモソードを構え、そして右足でシャオに跳躍した。

シャ「正面から突っ込んでくる戯け者が!」

 目からの迎撃のビームを上体を捻り回避し、

那「スーパーコズモクラッシュ!!

 “ザシュゥゥゥッ!!”

シャ「おおおおおっ!!!」

 左腕を犠牲にし、シャオは触覚を操り、那奈の剣を持つ両腕を擦れ違い様に断った。

那「――っ!」

シャ「身体の全てを原子サイズにまで微塵にすれば、いくら不死身といえど再生には時間がある筈――その時、残骸を封じ込めれば!」

 久々に支天輪から巨大な――戦車をも消滅させる銃――

 

“ぺかぺかん♪”

 

シャ「ビッグガンー♪(←こういう時でもお約束)――発射ぁ!!」

 ズドゥ。巨大な熱光線は那奈の脇をすり抜け、背後のアパートを向こう三軒の民家諸共消滅させた。

那「射撃能力には長けてないようね」

 再び発射――あっさり那奈は光線を首の動きだけでかわす――直進する熱線は、遠方の高層ビルを消滅させた。

シャ「ちぃっ」

太「『ちぃっ』じゃねぇ!! やってる事は街の破壊じゃねぇかぁぁぁっ!!」

 辺りを見回すと、至る方角から煙が上がっている。

 

キ「……。」

 コンビニの前で、キリュウは呆然とした。思わず、今購入した肉まんの袋を落としてしまう。

 買いに来た時は、この店の向かいには高層の商業ビルがあった筈だ――それが今は、下の方の階の骨組みが何とか残ってるのみ――これって一体…――いや、こんな事するのはやはり…。

キ「…今回は、一段とひどいな」

 ギャグだからってビル一つ消すかなぁ普通。七梨家の方角を見ると、何やら怪しげなビーム光とか爆発とか見えるし。

翔「何とかしてくれキリュウ」

 振り返ると、もう勘弁してくれ感を全身からにじみださんばかりの翔子がやって来て、キリュウの肩をポンと叩いた。

キ「…それは私に『死ね』と言ってるのと同じじゃないですか?」

 何千年も生きてる彼女だが、やっぱり自分から死にたくないらしく、フルスピードで首を横に振る。更に思わず丁寧語。

翔「そんな事無いよ。キリュウがちょっとばかし桑島嬢ばりな声でお願いすれば、ひょっとしたらズバっと参上ズバっと万事解決、ってなると思ったんだけど」

キ「…どういう理屈ですか…」

翔「あー、ところでキリュウ、昨日那奈姉来ただろ」(←コミックス読んだ)

キ「え? 昨日は誰も来てないが」

翔「あれ? 確かに昨日行ったと思うけどなぁ…――まぁいいや。とりあえず行こうぜ。危なくなったら頼むな

キ「……極力努力する」

翔「まぁ、さっきのは冗談だけど――キリュウ、もし戦闘中だったら……(耳打ちっ)……と、こう言え」

キ「――ふむ。それで…大丈夫なのか?」

翔「ああ、作者権限による強制命令だから、多分大丈夫」

 

 

 

シャ「どかんどかんどかん!!

 シャオの右手に装備された空気砲が火を噴く。放たれた弾丸は、那奈の残像を無残に通り過ぎる。

シャ「し、質量のある残像だとっ!?」

那「正確な射撃だ――だが、それ故に予測しやすい!」

ル「いや…予測云々って次元じゃ無いんだけど、もはや…」

 空気砲の衝撃波が、背後の民家の残骸を砕く――今度こそ死傷者出てるぞ…きっと。

 

 ――と、太助がはぁ、と溜め息をついた時、キリュウと翔子が走ってきた。二人とも、平常で無い表情だ。

キ「主殿、シャオ姉、ルーアン姉、そしてかなりの無敵っぷりで戦闘中のそなた(那奈の事)――…とりあえず、この話が『まもって守護月天・第16話『隠れて守護月天(前編)』』のパロディ小説だと判ってやってるのか?

シャ&那『!』

 二人の動きが止まり、同時にキリュウの方を見る。

那「ふっ…流石に、この展開はマズいって事かね」

シャ「幾ら『壊・月天』でも、原作を逸脱し過ぎてますしね」

太(以前の『13話』があまりにも暴走し過ぎって反響があったからな。…それに懲りてこういうカタチにしたのだろうが――これも違う意味で暴走し過ぎだろうな)

 

 

 

シャ「それじゃ、これでOKですね」

 全員の了承で、那奈姉が七梨家にやって来るシーンからやり直す事となり、先程太助(ってかほとんどは那奈&シャオなんだけど)がぶっ壊した玄関と家全体をシャオが必殺奥義『逆転チェスト』で修理し、そして再スタート――

ル「ちょっと待ってっ! 周囲の民家の被害の方は!?」

太「次回までには自動修復されてるだろ」

 ――『いあいぎり』で斬れる木ですか。

 

 

 “ピン…ポーン♪”(←押したまま止める技)

 

太「さー来たぞ那…いや、誰かなぁーっ!」(←ボー読み)

翔「今度は成る丈原作に沿ってやってくれよ…」

シャ「と言うか、翔子さん。アンタまだいたんですか」(ひでぇ)

 

太「はい、どちら様ーっ?」

T「俺だ!太助! ハイサイ!(←マイブームらしい)」

 次の瞬間、たかしの姿が消え、代わりにふぅっ…と息を吐いた那奈が右腕を大きく振り上げていた。――目を凝らすと、その後ろの空を見ると、何やら血を靡かせ錐揉み落下して行く人影が見えたが――

那「気にしない気にしない♪」

太「ああ、そのつもりだ――っ!」

 言うと同時、太助はドア閉め選手権ってのがあったら確実に優勝出来そうな速さでドアを閉めた。そして、針金を取り出してドアノブとチェーンロックを雁字搦めにし、更に木の板と釘を持ってきて、内側から打ちつけた。

太「よっしゃぁ! シャオ、ルーアン!ついでにキリュウとしょ…もとい山野辺! 隠れるんだっ!!」

シャ「太助様っ!」

 シャオが手を挙げる――挙手をしたからには、当てるしかあるまい。

太「何だ?」

シャ「もうページがありませんっ! これ以降は次回に持ち越しですっ」

太「………マジ?」

シャ「マジです。…だからページの無駄使いはよくないって言うのに…」

太「やってたのはお前だろっ! お前!」

 

 

 

 ……全作品中、屈指の最低な話と感じつつ、次回へっ

 

〜つづく〜

(もはや、刺されてもしゃーないな、これは。次回もサイヤ人風な那奈姉とシャオが対峙します(ぉ)

 


 

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