まもって守護月天!オリジナル小説
「光と影のワルツ(円舞曲)」
第四話 決戦のシンフォニー(交響曲)
ルーアン達が番人と戦っていたときから時間は少しさかのぼる。
太助とセイヤの二人は最上階の一つ下の階まで来ていた。
薄暗い通路を抜けると大きな部屋に辿り着いた。そこで二人の目に衝撃的な光景が飛
び込んできた。
太助「そんな・・・・。」
セイヤ「・・・・やってくれますね・・・・」
二人の目の前にはまるで人形のように身動き一つしないで十字架に縛り付けられてい
るキリュウとアリスの姿があった。
太助達は駆け寄り縛り付けていた鎖をはずし体をさすって呼びかけた。
太助「キリュウ、しっかりしろ!」
セイヤ「アリス、大丈夫ですか。」
しかし、二人とも何の反応も示さない。
セイヤ「・・・・魔力が少しも残っていない・・・・魂を抜かれたようですね・・・・」
太助「元に戻す方法はないんですか?」
セイヤ「元に戻すには、抜き取った相手を倒すしか方法がありません。」
太助「つまり、ハイランドとかいう奴を倒せばいいんですね?」
セイヤ「・・・・そのようですね。(・・・・それだけで済めばいいのですが・・・・最悪の場合
は・・・・)」
太助「だったら早く倒しに・・・・」
セイヤ「!」「危ない!」
セイヤは瞬時に身を翻し、魔法で防御壁を作り出した。鋭い光が防御壁にぶつかり互
いに砕け散った。
???「・・・・流石にここまでたどり着いただけのことはあるな。」
???「こうでなくては面白みに欠けるというものじゃ。」
???「ククククククッ、殺ス。」
目の前に現れたのは怪しい仮面をかぶった剣士のような男、少し背の小さい老人、人
というよりは獣といった生物、そして見た目は十代後半の美しい女性だった。
ディアラ「やはり来たか・・・・大人しくしていれば少しは長生きできたものを・・・・」
太助「お前は・・・・確かディアラとか言う・・・・」
ディアラ「覚えてもらって光栄だな。」
セイヤ「クッ、まさか四天王全員がこっちに来ていたなんて・・・・」
???「フォッフォッフォッ、御主達の浅はかな考えなどお見通しじゃ。」
???「もともとあの人間どもなどなんの利用価値もないからな。」
ディアラ「己の無力さをあの世で悔いるがいい!」
そう言うと共に四天王は太助達に襲いかかってきた。
セイヤ「クッ、流石にこれ以上は無理みたいですね・・・・」
太助「ここまで・・・・来たのに・・・・」
相手は四人、しかもこっちには動けないキリュウとアリスがいる。
太助達の必死の抵抗も虚しく四天王の強烈な攻撃に、もはや太助達は立っているのが
やっとだった。
太助「・・・・シャオ・・・・俺はもうシャオには会えないのか・・・・」
???「これで終わりだ!」
四天王の一人が剣を振りかざした。と、そのとき、その剣先に激しい雷が落ちた。
???「グアァァァッ」
強烈な電気に襲われ、その四天王の一人は激痛に苦しみだした。
それと同時に壁が爆音とともに粉々に砕け散った。
ディアラ「な、何者だ!」
???「貴方たちに名乗る名前は持ち合わせていませんよ。」
聞き覚えのある声に太助は思わず声を上げた。
太助「み、宮内出雲!?」
出雲「大丈夫ですか、太助君?」
太助「何でここに・・・・」
???「・・・・思ったより時間がかかったな。」
またしても知っている男の出現に太助は再び声を上げた。
太助「秀一!?」
秀一はキリュウに歩み寄ると、そっと抱きかかえた。
秀一「・・・・ごめんなキリュウ・・・・もっと早く異変に気付いていたらキリュウのことを
助けられたのに・・・・」
秀一は動かないキリュウにそっと口づけをした。その目からは涙が込み上げている。
???「フ、フンッ、虫けらが二匹増えたところでわしらには適うわけが・・・・ひぃっ
!」
秀一は凄い形相で四天王をにらみつけた。その強大な威圧感は四天王にある感情を植
えつけた・・・・恐怖という感情を・・・・
秀一「・・・・貴様ら、絶対に許さねぇ、一人残らず地獄に叩き落す!!!!!」
秀一は懐から大量の札を取り出し四天王に向かっていこうとした。が、
出雲「秀一君、待ちなさい。」
出雲が腕を掴んでそれを引き止めた。
秀一「放せ!」
出雲「冷静になりなさい!・・・・今ここであなたの力を奴に知られたらまずいのです
よ。」
秀一「だけど・・・・」
出雲「よく考えてください。そもそもキリュウさんをこうしたのは奴ですよ。あなた
はその怒りを奴にぶつけてください。」
秀一「・・・・わかった。」
出雲「太助君達を安全な所にお願いしますよ。太助君に何かあったらシャオさんが悲
しみますからね。」
出雲の指示に従い秀一は太助達を部屋の端のほうに運んだ。
秀一「大丈夫か?」
太助「あ、あぁ、なんとか。」
秀一「怪我がひどいな。今、治療してやる。」
太助「あ、それなら大丈夫、来々・長沙!」
太助の声で支天輪から長沙が出てきた。
長沙「大丈夫でしゅか?今、治療するでしゅ。」
秀一「なんで太助が星神使ってんだ?」
太助「まぁ、いろいろあったんだ。」
などと言っているうちに出雲は戦闘に入った。
ディアラ「我々四天王に独りで向かってくるとは・・・・舐められたものだな!」
出雲「あなたたち程度、私だけで十分ですよ。」
そう告げたかと思うと出雲は身軽に四天王の攻撃をかわして札を取り出し、なにやら
呪文のようなものを唱えた。すると二人の女の子が現れた。
太助「あれは?」
秀一「風神と雷神・・・・宮内神社に伝わる式神だ。」
セイヤ「(彼には以前会った事がありましたが・・・・これほどの力を持っていたとは・・
・・)」
太助「・・・・なぁ、風神とか雷神って本とかで見たのと外見がだいぶ違うんだけど・・・
・」
秀一「あれは出雲さんの趣味だよ。式神は持ち主に影響されるから。」
太助「・・・・なるほど・・・・」
風神と雷神は強烈な攻撃をくりだし四天王を追い詰めていった。
出雲「さて、そろそろトドメと行きますか。」
???「ふ、ふざけるな!戦ってまだ数行も立ってねぇし、まだ名も名乗ってないん
だぞ!」
出雲「知りますかそんなこと、全5話の予定でもう4話ですよ。戦うシーンをこれ以
上書くと5話目で完結しませんから。・・・・それにあなたたちが出ていると作者がSS
書くのに困るのでね・・・・」(いや、ホントややこしくて困ります。)
???「さ、作者の都合!?・・・・さてはわし等に名前が無いのも作者のせいか!!!
!」(名前考えるのって苦手です(;一_一))
???「オノレェ!覚エテイロォォォォォ!!!!!」
出雲「これで言い残すことは無いでしょう。とっとと消えなさい。」
こうして四天王の三人は天に召されました。めでたし・めでたし。
ディアラ「クッ・・・・もはや四天王も壊滅・・・・か・・・・早く殺せ!」
出雲は風神と雷神を戻しディアラに近づきそっと手を伸ばした。
出雲「大丈夫ですか?少し力を出しすぎたようですね・・・・」
ディアラ「な、何のまねだ!」
出雲「もう四天王はなくなりました。あなたと争う必要も無いでしょう。私も女性を
殺めるのは好みません。」
ディアラ「ふざけるな!!!!とっとと殺せ、負けてなおこの世に留まるなどと屈辱
以外のなんでもない!」
ディアラの意志は堅い・・・・それを悟った出雲は、もうそれ以上説得を続けようとはし
なかった。
出雲「・・・・そうですか・・・・惜しいですね。」
そう言うと出雲はディアラの額に札を貼り経を唱えた。
「ハイランド様、ご武運・・・・を・・・・」
そういい残しディアラは眩い光に包まれ消えていった。
出雲「彼女だけはほかの奴等と違ってちゃんと成仏させてあげましょう。・・・・そうで
すね・・・・次に生まれ変わるときは人間の女の子になれるように・・・・」
そう告げると出雲は太助達のほうに歩み寄った。
秀一「いくら美人だからって普通に成仏させるか・・・・普通?」
出雲「秀一君。たとえどんな方でも女性なら優しく接するのが常識ですよ。」
太助「(・・・・常識じゃないと思う・・・・)」
そう思っていると長沙が太助の服の袖をクイクイと引っ張っていた
長沙「太助しゃま、治療が終わったでしゅ。」
気が付くと体の痛みはすっかりなくなっていた。
太助「ありがとう、また呼ぶかもしれないからゆっくり休んでいてくれ。」
長沙を支天輪に戻していると、秀一が太助に尋ねてきた。
秀一「なぁ、ずっと気になってたんだけど・・・・この人、誰?」
秀一はセイヤを指差し太助に尋ねた。
出雲「私も知りたいですね。いったい誰なのか・・・・なかなかの力の持ち主ですし・・・
・」
太助「えっと、この人は・・・・」
セイヤ「私が説明しますよ。私はセイヤ、魔法の国の王子をしています。世間で言う
魔法使いという者ですよ・・・・妹を救いに来たのですが・・・・どうやら遅かったようで
す。」
そう言って、秀一達にアリスを見せた。
セイヤ「妹のアリスです。私が不甲斐ないばかりに、こんな目にあわせてしまいまし
た。自分の妹も守ってやれない駄目な兄ですね・・・・」
セイヤの言葉が秀一と太助にも突き刺さった。シャオとキリュウを助けてやれなかっ
た自分に罪悪感、怒り、悲しみ・・・・様々な思いが込み上げてくる。
出雲「セイヤさん、自分を責めるのはいけませんよ。・・・・これから救って差し上げれ
ばいいのです。もちろんシャオさんとキリュウさんも・・・・秀一君も太助君も、そんな
顔をしていると助けられるものも助けられなくなってしまいますよ。」
太助「確かに、落ち込んでたってしょうがないな。」
秀一「あぁ、そうだな。」
二人が元気を取り戻し、出雲もフゥッ、胸を撫で下ろした。
出雲「(最終決戦は目前です・・・・気持ちが張り詰めていると力が空回りするだけです
からね。)」
太助「・・・・ここにはシャオはいなかった・・・・」
秀一「きっと最上階だ・・・・急いだほうがいい。」
秀一達は最上階を目指して歩き出した。
太助「ちょっと聞いても良いかな?」
最上階に続く階段を上っている途中、太助は秀一に尋ねた。
太助「・・・・ハイランドって言う奴・・・・一体何者なんだ?秀一や出雲は知っているみた
いだけど・・・・」
秀一「・・・・宿命・・・・かな。」
少し低い声で秀一は語りだした。
秀一「奴は・・・・霧島家が代々戦ってきた究極の妖怪・・・・」
太助「究極の・・・・妖怪・・・・」
出雲「もともとは人間だったのですがね。」
太助「人間って・・・・一体どういう・・・・」
秀一「奴はもともと霧島家の一族だった・・・・千五百年以上も昔なんだけどな・・・・」
出雲「そう、とてつもない力を持ち、自分の意思に忠実な最凶の・・・・ね。」
秀一「この世を我がものにするため妖怪に魂を売り永遠の命を得た・・・・そして、闇の
頂点に立った・・・・だが、奴は自分と同じ力を持つ者を恐れた・・・・」
出雲「それが霧島家の一族です。いつか自分以上の力を身に付けた者が自分を倒しに
来る・・・・」
秀一「俺の一族は過酷な修行を小さい頃から積み重ね。勝負を挑んだ・・・・何人もの一
族の者が帰らぬ人となったが深手を負わせ人々を守ってきた。」
出雲「その歴史によると今から約五百年前、今までに無い力の持ち主が奴に致命傷と
なる傷を負わせた・・・・それ以来姿を消していたのですが・・・・」
秀一「奴め・・・・西洋の妖怪に目を付けていたとは思っても見なかった・・・・日本以外の
妖怪の力を吸収して、さらに力をつけやがった・・・・」
セイヤ「そして、それだけでは飽き足らずアリスやシャオさん達に目を付けた。」
セイヤの結論に秀一がコクリと頷く。
秀一「精霊や魔女は妖怪とは格段に力が強いから・・・・」
太助「・・・・ただ自分のためだけにシャオやキリュウにこんな酷いことを・・・・絶対に許
せない・・・・」
太助にこれまでにない怒りが沸いてくる。
出雲「話はどうやらここまでのようですね。」
階段が途切れその先には不気味な扉が佇んでいた。
セイヤ「凄まじい力ですね・・・・寒気がします。」
出雲「もう、後戻りはできませんよ。」
太助「・・・・この先にシャオが・・・・待っててくれ、必ず助けるから・・・・」
秀一「行くぞ!」
鈍い音と共にゆっくりと扉が開いた。
果たしてその先に待っているのは希望なのか絶望なのか・・・・それとも・・・・
その行方を知るものは誰もいなかった。
あとがき
うぅ、すみません。三話目のあとがきで嘘言っちゃいました。
何か今回秀一君あまり活躍してません。と言うか出雲さんの一人舞台です。
次こそは秀一君の出番です。(たぶん)
どうぞ次回も楽しみにしてください。
ハルカの勝手コメント
ちょ〜ささんから「光と影のワルツ(円舞曲)」第4話を頂きました。
最終話へむけて大きく展開していた物語が収斂していきます。
仇敵ハイランドの正体も明らかになり、ついに太助たち一隊は最終戦へ…
いよいよ次回、最終話です。
ちょ〜ささん、投稿どうもありがとうございました。
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